オークボアツコの「筋肉豆知識」

オークボアツコの「筋肉豆知識」

前脛骨筋

今回の「ぜんけいこつきん」は、足首を上にそらす動きを担当している筋肉です。足首をぐっとそらしたままキープしていると、すねの外側あたりがじんわりと疲れてきますよね。まさにここが前脛骨筋の本体部分です。すねの真ん中あたりのことを「弁慶の泣き所」と呼ぶことをご存知だと思いますが、ちょうどその外側あたりに位置します。ちなみに、すねの骨(脛骨)には、クッションのように表面を覆うような筋肉がないため、うっかりぶつけるとものすごく痛いのです。身軽な牛若丸が、ヒラリと武蔵坊弁慶の長刀をかわしつつ、扇子をそのすねに向けて投げつけ、勝利を得たという話がもとになっているとか、いないとか。どれだけ屈強な男でも、ここは弱点なのですね。…と、ここまで書いて、ふと「弁慶の泣き所って、鍛えようがないのか?」と疑問を感じたので、調べてみました。空手などのコンタクト系格闘技では、相手から蹴られることも、相手への蹴り攻撃にも、すねの強度って結構大事ですもんね。それ系のサイトをいくつか検索・参照してみると(ワタクシ、検索魔なのです。暇さえあれば気になった単語を検索しています。…地味な趣味です)、なんと、すねも鍛えられるとのこと。そして気になるその鍛え方はというと「砂袋を毎日地道に蹴る、もしくはビール瓶や棒などで毎日地道に叩く」…。なんというシンプルな回答でしょう。痛みを我慢してコツコツ続けて行くと、本当に痛みを感じづらくなるそうな。まあ確かに、機械的刺激を継続して与えて行くことで、骨構造自体も強化されるでしょうしね。

さて、閑話休題。前脛骨筋のお話に戻ります。前脛骨筋は、すねの外側から足首の前方を通り、土踏まずを通って足裏まで走行しています。したがって、収縮すると足首をそらす、かつ足首を内側に曲げて土踏まずを内側に持ち上げる作用があります。つまり、土踏まずのアーチ維持にも関わる筋肉なのです。扁平足の方、以前「足底筋群」を鍛えましょうという稿がありましたが、この前脛骨筋を鍛えるのもオススメですよ。あ、砂袋を蹴っても駄目です、それは骨。この筋の鍛え方は後ほどお伝えします。また、歩行時、何もない平地で自分の足先が地面に引っかかってつまずいたり、段差を上がるときつま先が上がりきらず段に引っかかる方がいらっしゃいますが、これ、加齢のひとつのサインなんですよ。年を取ると徐々に前脛骨筋の筋力が落ちて、つま先が上手く上がらなくなってくる方が多いのです。なお、高齢になると、足腰の力が弱くなって転倒し、骨がもろくなっていることも手伝って簡単に骨折してしまう方が増えてくるのですが、意外にも、外出時の転倒より、よく慣れているはずの自宅内での転倒の方が多いようです。慣れた環境で油断している時ほど、思わぬところでバランスを崩したり足をひっかけたりしてしまうのですね。普段から、歩くときはつま先をしっかり上げて歩くよう意識することを心がけ、習慣化しておくことがまず第一。加えて、特に道具を使わなくてもできる、「トー・レイズ」を行うことをおすすめします。名前通りつま先を上げる運動ですが、バランスが取りづらいので、立って壁などに手をついて身体がぐらつかないよう支えます。それでもぐらつくという方は、強度はやや下がりますが、椅子に座って頂いても構いません。両方の足裏を地面につけたところから、両つま先をゆっくりと持ち上げて行きます。この時、前脛骨筋に力が入っていることをしっかり意識し、強く収縮させましょう。つま先が上がるところまで持ち上げ、踵で立っている状態まで来たら5秒キープ。その後、ゆっくりとつま先を下ろして行きます。できるようなら床に足裏がつくギリギリ手前まで来たところで繰り返します。どうしても苦しければ床に足裏を軽くつけてから繰り返してくださいね。回数は15回×2~3セット程度がよいでしょう。それほど負荷の大きくない筋トレですが、あまり意識して強く収縮させる機会のない方は、かなり疲労を感じるかもしれません。

終了後はクールダウンとしてストレッチを行っておくと、筋トレのダメージを少なく済ませることができます。また、ウォーキングやジョギングでも前脛骨筋はたくさん使われていますので、ストレッチしておくクセを付けると良いですよ。方法は簡単。まず正座をします。いわゆる「割り座」のようにつま先が外に向いてしまわないようにだけ注意。つま先はきちんとお尻の下にしまいます。ここから後方に両手をつき、後ろへ身体を倒して行きます。太腿の前側とともに、すねの前側が引き延ばされる感じが分かると思います。このストレッチ感を味わいながら30~60秒ほど、ゆっくりとその位置を保って伸張をかけてください。痛みが出るほど身体を倒しすぎる必要はありませんよ。ぐっと引き延ばしたときに我慢できる程度の伸張痛なら結構なのですが、後日まで痛みが残るような無理はやめましょう。ダメージを緩和・予防するためのストレッチでかえって筋の断裂を起こしたりするなんてことはシャレになりません。前脛骨筋に限らず、ストレッチの基本は「伸びるぎりぎりまで引き伸ばして、そこでじっくりキープ」です。このような、伸ばした位置をじっと保つようなストレッチ法を「静的ストレッチ(スタティック・ストレッチ)」と言います。反動や動きを伴わないので、筋損傷を起こしにくい手法と言えるでしょう。

足首をそらす筋力を強化しておくと、逆の動き、つまり足首を後ろへ蹴る動きも強く発揮できるようになります。矢をつがえた弓を強く引き絞るほど、そのぶん矢が前方へよく飛ぶようなもので、ある筋を強化すれば、その反対の働きをする筋肉(拮抗筋)の収縮力も強く発揮されやすいことが分かっています。足首をそらしたり蹴ったりを持久的に繰り返すようなランナーの方々にもおすすめしたいトレーニングですね。さて、読者の皆さまは、部屋の中を歩くときに足裏が床をこするような「すり足」状態になっていませんか?若々しい歩行のためにも、すり足は今日からやめましょう。夏ですから、お出かけの際、はき込み浅めのサンダルやパンプス、ビーチサンダルなんかを履いて、脱げないようにつま先を上げながら歩くよう、むりやり意識付けする、なんてのもいいかも?くれぐれも転倒にはお気をつけてお出かけくださいね~!


<プロフィール>

オークボアツコ

1978年3月生まれ。♀
本職は大学講師・理学療法士。その傍ら、絵の製作活動などやっています。
そんな諸々の素性が重なったご縁で、このたび「筋肉かるた」読み札の挿絵を担当させて頂きました。
趣味はランニングと飲酒を少々。筋トレでなく肝トレに励んでいる日々です。

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