オークボアツコの「筋肉豆知識」

オークボアツコの「筋肉豆知識」

上腕三頭筋

ウチの母は、毎回こりずに宝くじを購入しています。幼いころ、当たったら何に使うのか、と彼女に聞いたところ、「二の腕の美容形成に使う」とキッパリ。その希望は60を越えた今でも変わっていない様子です。さて、そんな母の遺伝子と体質をしっかり受け継いだワタシも、なかなか立派な二の腕の持ち主。さすがに母ほどの「フリソデ」状態ではない(と思いたい)ですが、半袖を着るこの季節、二の腕のボリュームは妙齢女子にとってゆゆしき問題です。今回取り上げる上腕三頭筋は、このフリソデ部分の奥に存在する筋肉です。三頭、という名前の通り、頭が三つに分かれた形で筋肉が付着しており、この三つの頭から筋が肘の先端(肘頭と言います)に向かって合わさっていくように走行しています。以前ご紹介した、肘を曲げて力こぶを作る筋肉「上腕二頭筋」に拮抗する筋肉で、肘を伸ばす動きを担当しています。上腕(二の腕)を鍛える、と言うと、力こぶを作る姿をイメージしがちですが、実は上腕三頭筋はかなり大きな筋肉で、上腕の筋肉量の3分の2を占めると言われます。なので、この上腕三頭筋をしっかり鍛えておけば、筋肉質なカッコイイ二の腕が手に入るはず。…なのですが…。

私たちは日常生活において、物を持ち上げたり引き寄せたりと、肘を曲げる方向へ力を入れる動作は意識せずとも数多く行っています。しかし、例えば物を押し出すような、肘を伸ばす方向へ力を入れる動作って意外と日常にないのです。だからこそ、年齢を経て全体的な運動量が減ってきた中高年の皆さまや、日常生活の運動強度が低い女性などでは、余計に筋肉量が保たれにくいのですね。しかも、「皮下脂肪」の正体である白色脂肪細胞は、もともと二の腕・おなか周り・お尻などに蓄積しやすい仕組みになっています。今は体組成計などで簡便に「体脂肪率」を計測することができるようになりましたが、それ以外の皮下脂肪厚の測定法として、ノギスのような器具(キャリパー)で、利き腕でない側の上腕三頭筋部の皮厚を測るという方法も昔から行われてきました。この部分のプヨプヨが、全身の体脂肪量を反映しうる指標だということですよね。

ちなみに脂肪細胞の「数」が増える時期は出生前・乳幼児期・思春期に限られ、それ以外は数は変わらずに1個1個の脂肪細胞の大きさが変化することで脂肪量が調整されています。乳幼児期や思春期に暴食しちゃってたりした方は残念ながら脂肪細胞の数自体が多い場合もありますが、そうでなければ勝ち目も大きいかもしれません。女性の場合、二の腕が太いと(本当の体型に関係なく)太って見えてしまうそうです。食事と全身運動で全身の体脂肪量を落とす努力をしつつ、脂肪の下の上腕三頭筋をしっかり鍛えて、その上にしぶとく乗っかったフリソデ脂肪のたるみを解消していきましょう。男性諸君も他人事でなく、鍛え上げた上腕は逞しい上半身のアピールに欠かせませんよ。何しろもとの筋肉のボリュームは二頭筋より三頭筋の方があるわけですから、三頭筋を効率よく鍛えられればカッコイイ腕づくりに有利ということですよね。せっかくの夏、自信をもって腕を出して歩けるよう、トレーニングしてみましょう。

自宅で、しかも何の道具もなく行える上腕の筋トレと言えば、やはり腕立て伏せ(プッシュアップ)でしょうか。以前、大胸筋のトレーニングでも腕立て伏せをご紹介しましたが、ちょっと手の位置などのポイントを変えることで、上腕三頭筋への負荷量を上げることができます。コツは、通常の腕立て伏せよりも両手の幅を狭くすること。この状態で腕を曲げ、胸を床に近づけていくと、両方の前腕と上腕の角度がちょうど菱形を描くような形になるので、「ダイアモンド・プッシュアップ」とも呼ばれるそうです。なんだか格好いいネーミングですね。息を吐きながら3秒かけて肘が伸びきる直前まで押し上げ、息を吸いながら3秒かけてアゴか胸が床に着く直前まで肘を曲げ1秒キープ、を繰り返します。動作はあくまでゆっくりと、反動をつけることなく行います。肘を伸ばしていく時には三頭筋を、曲げていくときには二頭筋を意識すると、両方にしっかり働きかけることができます。回数は10~15回×2~3セット(セット間の休憩は1分程度)、これも大胸筋の筋トレと同様です。普段あまりここを使っていない方は特に、筋トレの疲労が蓄積しやすかったり筋肉痛が起こったりしやすいかもしれませんので、疲労の状況を見ながら連日ではなく1~2日おきに行いましょう。

…なーんて書いているワタシですが、実は本当に手や腕の力が弱く、握力はおばあちゃん並み、腕相撲は激しく弱く、腕立て伏せなんてほとんどできません…。まるで箸より重い物を持ったことのない乙女みたいな筋力です。その割に、高校時代は何故か柔道部に所属しており、その時代から腕立て伏せは大の苦手で、何となく「やってるフリ」をしつつコッソリさぼっていたのを思い出します(遠い目)。そんな脆弱な三頭筋の女子たちにもできそうな強度のトレーニングが、中身の入った500mlペットボトルをダンベル代わりに使う方法。ペットボトルを持った方の腕を後方にしっかり持ち上げ、この位置をキープしたままゆっくりと肘を曲げ伸ばしします。脇はきちんと締め、反動を付けずに反復して下さい。肘を伸ばすときにしっかり三頭筋に意識を集中して、筋肉が疲労するまで繰り返します。もうダメ、疲れちゃった…となったら休憩を1~2分とり、再度、肘の曲げ伸ばしを同様に行います。筋疲労が蓄積しているため、1セット目の回数ほど反復できませんよね。でもそれで結構です。このようにして、疲れるまでの回数の反復を2~3セット。これを1日おきくらいに思い出したタイミングで継続してみて下さい。

日常生活では意外と使われない「肘を伸ばす」筋力ですが…あ、そうだ、例えばボクシングのパンチを打つ動作や、剣道で竹刀を振りおろす動作などではかなり重要ですね。のっぴきならない事態が生じて、いざ戦わねばならぬ!となったとき、三頭筋を鍛えてあるか否かで勝敗が決まるかもです。…いや、失言。ストリートファイトは極力やめましょう。きれいに鍛えた三頭筋を駆使して鮮やかにスイカ割りなど行いながら、平和で楽しい夏をお過ごしください。


<プロフィール>

オークボアツコ

1978年3月生まれ。♀
本職は大学講師・理学療法士。その傍ら、絵の製作活動などやっています。
そんな諸々の素性が重なったご縁で、このたび「筋肉かるた」読み札の挿絵を担当させて頂きました。
趣味はランニングと飲酒を少々。筋トレでなく肝トレに励んでいる日々です。

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