オークボアツコの「筋肉豆知識」

オークボアツコの「筋肉豆知識」

大殿筋

お尻の美容整形といえば、日本では脂肪吸引などの「お尻を小さくする」手術がメインでしたが、最近は、魅力的な形よいお尻にしたい、と希望する方が増えてきたそうです。日本人女性には筋肉があまり発達していない平らなお尻が多く、脂肪を注入したりシリコン等を入れたりすることで、ぷりっと丸い、格好いいお尻を作るのだとか。女性だけでなく、キュッと上がったお尻は若さの象徴であり、垂れたお尻は見た目年齢を大幅に引き上げてしまう要因になります。お尻の表層を広く覆う筋肉が大殿筋ですが、これを包む筋膜から伸びる結合組織がお尻の皮下脂肪と一体化しています。加齢に伴って筋肉が衰えてくると、筋膜も薄く弱くなり、結合組織がゆるんで脂肪の重みを支えきれなくなり、お尻が垂れた状態になるのです。顔やバストには組織が下垂しないような靭帯構造があるのですが、お尻にはそのような組織がないため、特に垂れ下がりやすい宿命なのです。

大殿筋は、股関節を伸展させる(太腿を身体の後方へ伸ばす)働きを持つ筋肉です。しゃがんだ状態から立ち上がる動作や、ジャンプなど後ろに脚を蹴る動作で使用されます。大きく発達した大殿筋は、直立二足歩行を行うヒトという種に特有の筋肉です。ゴリラやサルにも一応あるのですが、ヒト以外の霊長類のお尻は小さく、大殿筋は発達していません。つまり、股関節を直立位まで伸ばして安定に保ったり歩いたりする筋力を持たないのです。だからこそゴリラやサルは股関節を曲げたまま(補助的に手を地面に付けて)歩くのです。ちなみに、四つ足歩行の馬のお尻は大きく丸く発達していますが、あれは実は大殿筋ではありません。馬の後ろ脚、ヒトでいうと「膝」のように見える関節がありますが、あれ、後ろに曲がっていますよね。あの部分は「踵」、膝下に見える長い部分は足部の骨です。地面に着いているのはひづめですが、ヒトでいうとちょうど爪先立ちをしている状態になっています。馬の大腿骨は短く、膝関節はお腹の横あたりに在り、丸く張り出したお尻の部分は、実は大腿の後面…すなわち、そこに付いているのは膝を曲げるハムストリングス筋なのです。四つ足動物は股関節を常に曲げた状態で歩いていますから、脚を(体幹を越えて後方まで)蹴るための「大きな」殿筋は必要ないのでしょう。

格好いいお尻を作る…いわばヒップアップするためにまず習慣化するべき日常生活のコツは、「歩幅の大きなテキパキした歩行」を心がけることです。歩幅を大きくするには、前方に大きく足を踏み出すことも必要ですが、大殿筋をしっかり使って、後ろの脚を「大きく後方に蹴りだす」ことも重要です。普段の生活から脚を大きく蹴ることと、その際の大殿筋の収縮(お尻に力が入ってキュッと固くなる感じ)を意識しながら歩くようにするだけで、大殿筋のトレーニングになりますよ。歩行速度が速い、つまり大股で颯爽と歩く人ほど健康に長生きできる傾向あり、との研究結果もあるようで、これも歩行に関わる筋力の差に由来することなのでしょうね。

習慣化できる筋トレをお求めの方には、寝る前のヒップリフトなど良いのではないかと思います(あお向け状態でできるため)。両膝を立ててあお向けになり、腕は身体の横に置いておきます(この時、膝を深く曲げておくと大殿筋をしっかり使うトレーニングになりますし、膝の角度を浅くすると大殿筋というよりは大腿後面のハムストリングスを鍛えるトレーニングとなります)。ここからお尻をゆっくり持ち上げ、上げきったところで数秒キープしてゆっくり下ろします。このとき床までペタンとお尻を下ろしてしまうのでなく、床すれすれのところで止めて反復するとさらに効果的です。10~15回を2~3セット程度が目安ですが、物足りないなあという方は、片脚を組んで反対の脚に乗せて重りにし、残る片脚のみでヒップリフトを行うとキツさ倍増です。ただし、反動をつけて反復すると十分な収縮が得られず効果が出ませんし、お尻を高々と持ち上げすぎて腰がそってしまうと腰に負担をかけることになります。大殿筋が収縮してお尻がキュッと固く締まる感じを意識しながらゆっくりと動作を行ってください。寝る前に強度の高すぎるトレーニングを行うと交感神経が興奮してしまってよく寝付けなくなることもありますので、終わったらクーリングダウンのための軽いストレッチや深呼吸でしめるといいと思います。

年齢は肌よりお尻に出る、とか、お尻の形でだいたいの年齢は当てられる、等々、…世間一般の人は意外と他者のお尻を見ているみたいですよ。日々のちょっとしたトレーニングの積み重ねで、実年齢より若いヒップラインを目指しましょう!


<プロフィール>

オークボアツコ

1978年3月生まれ。♀
本職は大学講師・理学療法士。その傍ら、絵の製作活動などやっています。
そんな諸々の素性が重なったご縁で、このたび「筋肉かるた」読み札の挿絵を担当させて頂きました。
趣味はランニングと飲酒を少々。筋トレでなく肝トレに励んでいる日々です。

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