オークボアツコの「筋肉豆知識」

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横隔膜

「横に隔てる膜」と書いて横隔膜。胸(胸腔)とおなか(腹腔)を横に区切っています。膜とは言ってもペラペラした膜ではなく、きちんと厚みのある筋肉です。横隔膜はドーム状の形をしていて、収縮するとこの頂上部分(腱中心と呼びます)が引き下がり、ドーム部分が下がって平らな状態になる、つまり胸郭が広がって胸腔内圧が下がります。胸郭には肺が収まっていますから、この内圧が下がると肺が引っ張られるように膨らみ、吸気が起こります。

ちなみに体腔を二分割する横隔膜は「哺乳類に特有の」器官です。横隔膜が先天的に欠損していたり、後天的に断裂したりすると、肺は腹部の内蔵によって圧縮されてしまい、呼吸不全となるため生命を維持できません。つまり、進化の過程において哺乳類は、横隔膜のおかげで大きな肺を持ち、大量の酸素を取り込む仕組みを獲得したということです。

焼き肉でいう牛の「ハラミ」がこの横隔膜にあたりますが、実は最近「鶏のハラミ」や「マグロのハラミ」「鮭ハラミ」などの食材名が出回っている場合があります。これ、先ほどの定義からするとおかしいですよね。調べてみると、鶏のハラミとは「腹壁の筋肉(外腹斜筋、内腹斜筋、腹直筋及び腹横筋)」のことを指しているようです。一方マグロや鮭のハラミは「内蔵を取り囲む腹側の身」の総称のようで、ハラモやハラスとも呼ぶとのこと。やっぱり横隔膜ではないということですね。

さて、この横隔膜は骨格筋に分類されます。すなわち、四肢の筋と同様、自分の意思で収縮させることができる随意筋だということです。だからこそ意識的に深呼吸をしたり息を止めたりすることができるのですが、もしこれが単純な随意筋として意識的にのみ動かせるだけのものだとしたら、例えば睡眠中に呼吸することを忘れて死んでしまう、なんてことになります。そこで横隔膜は他の骨格筋と異なり、内臓壁のような不随意筋と同じように自律神経によって不随意的にもコントロールされているのです。無意識と意識の境界にある筋肉、ということもできるかもしれません。

「しゃっくり」は、この横隔膜が不随意に痙攣する現象です。なかなか止まらないと苦しいですよね。でも、不随意な筋の痙攣ということは、言うなれば「足がつった状態」などと同じです。なので、これを解消するには同じように、痙攣してしまっている部分をストレッチするか、意識的に筋収縮をコントロールするか、ということになるはず。昔から言われる「しゃっくりの止め方」を調べてみると、色んなものが出てきます。例えば「息を止める」「腹式呼吸をする」「脇腹を思い切りのばす」は不随意な痙攣をストレッチや意識的な収縮で止めるやり方、と言えるでしょう。「びっくりさせる」「背中をたたいてもらう」等は横隔膜へ意図しない刺激を急に与えることで痙攣を止めるやり方でしょう。「豆腐は何からできてる?」と他人から尋ねてもらい、答える、というのも、予期しない質問を受けるというびっくり刺激の一種でしょうか。「冷水をのむ」「ごはんを一口分飲み込む」「砂糖をスプーン一杯食べる」「眼球をそっとこする」等は、迷走神経(自律神経)を刺激して痙攣を止めようというやり方ですね。個人的には「体を前屈した状態で冷水を飲む」がNo.1だと思っています。物理的に腹圧を高めて横隔膜を圧迫した状態にし、かつ自律神経を刺激するという合わせ技ということになります。やったことのない方はお試し下さい。なお、意味不明の方法としては「人差し指を耳に入れて30秒~1分待つ」というのがあるようです。このやり方で止めている方、効果のほどを教えてください。お待ちしております。

<プロフィール>

オークボアツコ

1978年3月生まれ。♀
本職は大学講師・理学療法士。その傍ら、絵の製作活動などやっています。
そんな諸々の素性が重なったご縁で、このたび「筋肉かるた」読み札の挿絵を担当させて頂きました。
趣味はランニングと飲酒を少々。筋トレでなく肝トレに励んでいる日々です。

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