体力は20歳前後をピーク(下図①)に、年0.5~1%ずつ低下します。わずかな割合なので実感は得づらいですが、10年、20年と積み重なると大きな変化となり、特に50歳以降(下図②)は筋力低下が加速し、体力の衰えを感じやすくなります。しかし、日常生活で積極的に身体を動かしたり、定期的な運動を行い活動的な生活を送ることで体力の低下を緩やかにすることが可能です。
身体活動の代表的な恩恵として以下の8つが挙げられます。
1.体重のコントロール
2.心血管疾患のリスクの減少
3.2型糖尿病やメタボリック症候群のリスクの減少
4.いくつかのがんのリスクの減少
5.骨や筋肉の強化
6.メンタルヘルスと気分の向上
7.高齢者の日常動作の能力向上や転倒防止
8.長生きする可能性を高める
出典:アメリカ合衆国保健福祉省
筋力や有酸素能力は病気や死亡のリスクにも大きく関連しており、健康で長生きするために体力の維持はたいへん重要な課題です。
80歳の人が20歳の人に比べてどれくらい筋肉が減少しているのか示した表が下記のとおりです。全身では10~15%程度の減少ですが、部位別で見ると、下肢が約30%の減少と圧倒的です。下肢は立つ・歩く・しゃがむなど、あらゆる生活動作に密接に関わっており、下肢の筋力低下をいかに防ぐか―― つまり「健脚づくり」が重要です。
ここで下肢筋力を簡単にチェックできる「30秒椅子立ち上がりテスト」(中谷ほか)を紹介します。
1.椅子にやや浅く座る。両膝は握り拳1つ分あけ、両手を胸の前でクロスし、上体をやや前傾する(図の左)
2.椅子から立ち上がる。膝、腰、背中が完全に伸びるところまで立ち上がる(図の右)
3.「椅子から立ち上がる⇔椅子に座る」動作を最大スピードで30秒間行い、回数をカウントする
※椅子に座る際に、どっしりと座りすぎないようにしましょう
※5~10回練習してから本番を行ってください。時間測定や回数カウントをお願いできる人がいる場合は頼みましょう。
30秒椅子立ち上がりテストの評価は、下表のとおりです。ぜひ自宅で実施し、現在の自分の下肢筋力の状態を知り、健脚づくりに活かしてください。特別な道具も必要ないため、健康づくり支援に携わる専門家も、現場で大いに活用できるのではないでしょうか。(虚弱高齢者向けには10秒間の椅子立ち上がりテストもあります)
<プロフィール>
内藤 隆 (ないとう たかし)
運動指導者(フィットネス、トレーニング)、スポーツ科学研究者(応用健康科学)
■株式会社CSUP代表取締役
■パーソナルジム「オーワン銀座」代表
■明治大学研究・知財戦略機構 サービス創新研究所 事務局長・客員研究員
■早稲田大学エルダリーヘルス研究所 招聘研究員
■東北芸術工科大学創造性開発研究センター学外研究員
■日本健康教育学会会員、日本運動疫学会会員
■健康体力づくり事業財団認定 健康運動指導士
■修士(スポーツ科学)
メールアドレス:takashi@roundflat.jp