『味覚』と『おいしさ』そして・・・
食べたり飲んだりしている時、人間は味わっている。
当たり前かと思うが、鳥類や爬虫類では味わずに、そのまま丸飲み・・・なんてこともある。
味わうことは当然ではないのである。
人間が味わうようになったのは、進化の過程で、生きるために有利だったとも言われている。そんな身近な「味わう」とはどういうことなのか?味覚とおいしさで、ひもときたい。
まずは味覚。人間は味を、5つの味に分けて感じている。
甘味・塩味・酸味・苦味・旨味。
食べ物を噛むことで、唾液に味が溶け出し、舌にある味蕾が味をキャッチする。そして、まんべんなく行きわたり、脳へ伝わる小旅行なのである。
甘味はエネルギー源に。
酸味や苦味は、食べた時の注意喚起として、名わき役。
塩味は身体のバランスに必要なミネラルを。
そして、旨味はたんぱく質摂取といった情報が、目的地の脳へと伝わっているのである。
味蕾の数は、男性より女性に多い。女性は料理した際、食物の腐敗を確かめるために自らの舌を使っていた。その名残で女性は一般的に男性より味覚が優れているとか。
なので、男性は味蕾の数が少ない分、味に対する感受性が女性より強く、甘い味が苦手…と閉口するわけである。
一方、女性は甘い味に対して耐性があるということになる。
女性が甘いものを好むのはここからきている。
そして、生理が近づくと低血糖になり、イライラしてくることが多い。それを解消するため、精神を安定させる脳内物質であるセロトニンの分泌を促進する働きがある甘いものを、無性に欲するように。毎月のことだから、男性より甘い物を食べる習慣がついてくる・・・ということなのだ。
女性は味蕾の数は多いが、生理の影響で、体温の変化とともに味の感じ方が変わり、毎日同じ味を作り続けることが難しくなることが多い。女性の料理人の数が少ないのも、こういったところが影響しているのであろう。
ここで間違いやすいのは、おいしさである。
おいしさは、味覚そのものだけではなく、料理ができあがった時の印象(視覚)、料理の香り(嗅覚)、舌と歯触り(触覚)、噛んだ時の音(聴覚)、そして食事の雰囲気や環境・・・
味覚を含めて、「五感」全体を総動員して感じるものなのだ。
そして、温かい、冷たい、温覚も大切である。
人の心も、温覚によって人間味が変わる。
人生という長い旅は、小旅行の繰り返しかもしれない。
<プロフィール>
小山 幸子 (こやま さちこ)
東京在住。
高校卒業後、国産車カタログ製作会社に8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。
15年間の病院勤務を経て、2014年よりフリー。
現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等の活動をしている。
『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。
メカオンチのあがり症。趣味は書道。
管理栄養士・西東京糖尿病療養指導士・毎日書道会会友(雅号:小山 桃花)