日本は超高齢化社会に突入しています。
2013年から開始した、健康日本21(第2次)。
この中で、高齢者の健康づくりの方向性として、社会参加については、個人では難しいので、行政の協力をと提唱しています。
それなのに、
日本人の高齢者を対象に、食事の質と筋量、身体機能との関連を検討した研究については、まだまだなのが現状です。
厚生労働省が2016年に行った調査では、適正体重を下回って、低栄養傾向にある人は、65歳以上の18%を占めていると発表しました。
食事の回数や量が減ることで、運動量や外出も減ります。
そして筋力が低下して、段差でつまずいて寝たきりに・・・悪循環に陥るケースが少なくありません。
そこで、東京都健康長寿医療センター研究所より、国内の疫学研究を約1年間に及びまとめあげた、『健康長寿ガイドライン』を15年ぶりに改訂しました。
その中で、フレイル対策は、栄養・体力・社会の3本を柱としています。
食生活の合言葉が、『さあにぎやか(に)いただく』
10の食品群があり、7つ以上が合格の目安としています。
いろいろ食べる事、『食の多様性』がポイントです。
まんべんなく食べることで、筋肉などの体組成に繋がります。
そして、エネルギーは増えないけれど、いろいろな栄養素が増えていきます。
これを、栄養素密度が高くなるといいます。
栄養素密度とは、一定量の食事に含まれる栄養素と種類と量のこと。
栄養素密度が高いと、少量でも多くの栄養素が摂れます。
体脂肪は変わらないが、除脂肪部分である内臓や筋肉量もアップして、しっかりした身体のかたちになっていくのです。
年齢を重ねていくと、メタボリックシンドロームに予防より、バランスとともに、しっかりと栄養補給をすることが重要になります。
10の食品群は、
①さ:魚。動物性たんぱく質やカルシウム・ビタミンDが豊富です。干物や加工品、エビ・イカ・カニも含まれます。
②あ:あぶら。適度な油脂分は、細胞などをつくるのに必要です。炒め物、パンにバター、ドレッシングも。
あぶらを使う料理もここの仲間です。
③に:肉。良質なたんぱく質の代表です。ウインナー・ベーコンなどの加工品も。
④ぎ:牛乳。たんぱく質とカルシウムが豊富です。チーズ・ヨーグルトなどの乳製品も。
⑤や:野菜。ビタミンや食物繊維がじゅうぶん摂れます。
緑黄色野菜を加えながら、加熱することでカサを減らしてたっぷりと。
⑥か:海藻。低エネルギーでも、ミネラルと食物繊維が豊富です。のりやひじきなど、乾物でも。
⑦い:芋。糖質でエネルギー補給。ビタミン・ミネラルもチャージします。ふかして、お菓子代わりにも。
⑧た:卵。いろいろな調理法で簡単にたんぱく質が摂れます。
炒り卵など少量からでも。
⑨だ:大豆。たんぱく質のもとになる必須アミノ酸や、カルシウムも豊富です。豆腐や油揚げも。
⑩く:果物。ビタミン・ミネラルが多く、食物繊維が摂れます。朝食やデザートに。
目標値は、BMIが20以上、血清アルブミンが4.0g/dL以上。
アルブミンは、たんぱく質からつくられる成分です。
数値が4.0を下回ると、栄養不足のサインになります。
歯が弱くなってきたからと、やわらかい物ばかり食べていると、噛む筋肉、飲み込む筋肉も弱くなります。
年齢を重ねると、簡単にあるもので…と、粗食でいいかなと思われがちです。
粗食の方が健康によいと、信じ込むケースも少なくないでしょう。
肉や油脂類の量が減ると、エネルギーとともにたんぱく質不足になっていきます。
料理がめんどうで、同じものを食べていないでしょうか?
いろいろな栄養素が不足して、頭や筋肉の弱るモトになっていきます。
フレイルとは、身体的にも精神的にもひよわになって、人との交流も減っていく状態。
要介護になる一歩手前ということです。
目標は、老化予防。
つまり、機能的健康の維持ということ。
歩く力を維持するために、筋力、足腰はしっかり維持。
昼夜のリズム、まとまった睡眠。積極的な社会参加。
ここまで記してきて、この事項は、高齢者に特化した事ではないのでは?
しっかり食べなくても、無理が効くのは若い時だけ。
50代後半になったら、その後の健康・筋肉状態を左右するかもしれません。
ご意見、ご感想をお待ちしてます!
<プロフィール>
小山 幸子 (こやま さちこ)
東京在住。
高校卒業後、国産車カタログ製作会社に8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。
15年間の病院勤務を経て、2014年よりフリー。
現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等の活動をしている。
『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。
メカオンチのあがり症。趣味は書道。
管理栄養士・西東京糖尿病療養指導士・毎日書道会会友(雅号:小山 桃花)