筋肉栄養学

筋肉栄養学

第1回 生命のカナメ~たんぱく質~

 漢字で、蛋白質と書きます。
 『蛋』とは、卵の意味。卵の白身と同じ物質の仲間を、たんぱく質といいます。
 英語ではprotein。語源はギリシャ語のproteiosで、意味は、最も重要なもの、第一人者。
 その名のとおり、たんぱく質はあらゆる生物の生命活動のカナメになっているのです。
 
 炭水化物・脂質と並ぶ三大栄養素のひとつなのは、ご承知の上でしょう。
 炭水化物・脂質と異なるのは、エネルギー源でありながら、それが目的ではないというところにあります。
 まずは、筋肉・臓器など、ヒトの身体を作っている重要な建築材料であること。
 身体の化学反応である代謝をスムーズにする、酵素にもなります。
 酵素をつくるというのは、炭水化物や脂質にはありえないことのひとつです。
 1万-2万はあるといわれている酵素は、様々な働き方をします。
 それはアミノ酸の配列・組成によって異なるからです。
 そして、ホルモンの材料にもなり、さらに遺伝という、厳粛な事実も担っています。
 たんぱく質の作り方を、親から子へ伝えていくことに、ほかならないのです。
 動物の身体のたんぱく質は、結局は食物を元手にしてつくられます。
 たんぱく質を多く含む肉や魚は、何か別の生物の組織。
 したがって、動物とは他の生物を食べて生きるものともいえます。
 無機物だけから、ちゃんと自分自身のたんぱく質をつくって生きていける植物と、ここが決定的に違うところになります。
 ヒトももちろん、外から毎日たんぱく質をとり入れなければ、健康を維持することができないということになるのです。
 多糖が、単糖の数珠つなぎでできているのと同じように、たんぱく質もアミノ酸という単位を、鎖状につなげてできています。
 多糖の構成する糖は、せいぜい1-2種類にすぎないのに、たんぱく質の構成アミノ酸は20種にのぼり、多種多彩です。さらに、多糖は同じ種類でも、分子の長さや形が一定していないのに、たんぱく質は、同じ種類であれば、ハンコを押したように同じ形をしています。
 
 このことから、多糖は結晶しないけれど、たんぱく質は複雑な高分子なのに簡単に結晶することができるのです。
 これは、たんぱく質分子の最大の特徴とされています。
 食物のたんぱく質は、いったん構成アミノ酸までバラされてから吸収して、再び体内で必要とするたんぱく質に再合成されていきます。
 と、いうことは、食物のたんぱく質は、身体のたんぱく質のアミノ酸組成に近いものほど、不足することなく効率よく利用できる・・・という理屈になります。
 一般的に、植物性たんぱく質より動物性たんぱく質の方が、栄養的に優れているといわれるのは、ヒトは動物だから、植物より動物に近いアミノ酸組成をもっているためです。
 栄養学とは、あくまでもヒトが対象ということになります。
 ウシ、ウマなどの草食動物は、たんぱく源を草に求めます。
 肉食動物に比べて、草食動物は大量のエサを摂取しなければ、身体のたんぱく質合成に間に合わないからです。
 
 日本では義務教育である小学生で、三大栄養素について学習します。
 もう一度たんぱく質について、知識の合成と分解を繰り返すいいきっかけになりますように。


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<プロフィール>

小山 幸子 (こやま さちこ)

東京在住。
高校卒業後、国産車カタログ製作会社に8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。
15年間の病院勤務を経て、2014年よりフリー。
現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等の活動をしている。
『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。
メカオンチのあがり症。趣味は書道。
管理栄養士・西東京糖尿病療養指導士・毎日書道会会友(雅号:小山 桃花)


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