これが本当の健康づくり運動

これが本当の健康づくり運動

第13回 関節(足首)を回す準備運動

【足首を回す運動をやめた方がよい理由】
 ここまで読み進めていただくと、もう、詳しい解説をしなくても、「足を回す運動」もやめたほうがよい運動であることは容易に想像できると思いますが、念のために解説をしましょう。
 足関節の左右方向の安定性を高めるために、主な靭帯としては、足関節の内側には前脛腓(ぜんけいひ)靭帯、三角靱帯,後脛腓靭帯があり、外側には前距腓(ぜんきょひ)靭帯、踵腓(しょうひ)靭帯、後距腓靭帯が存在します(図1)。

図1 足関節の安定性を高める働きをしている靭帯
図1 足関節の安定性を高める働きをしている靭帯

 足首の捻挫は頻繁に発生する整形外科的な外傷ですが、特に多いのは、足首の外側を伸ばしてしまう、専門的には内反(外返し)捻挫とよばれるものです。ひどい場合は、踵腓靭帯が切れてしまう靭帯断裂となり、傷むだけでなく、足関節の安定性が完全に損なわれてしまいます。
 従来の「足首を回す」運動は、これらの靭帯を伸ばす運動にあたるので、繰り返し行っていれば、これらの靭帯が伸びてしまって足首の安定性を保つことができなくなるので、捻挫や靭帯断裂を起こしやすくなると考えることができます。

【お勧めの足首を回す運動】
 足先を地面に着けたまま行う方法では、足首周りの骨格筋は受動的に伸ばされるのみで、筋温を高めたり、神経系の活動を高めたりする十分な効果は期待できません。
 そこで、膝を引き上げ、片方の足先を地面から離し、下腿の骨格筋を能動的に働かせることによって足首を回す方法をお勧めします。足を空中に浮かせているため、回す足首には体重は全く加わっていない状態になるため、足関節の安定性を保つ働きをしている靭帯には体重の負荷は加わらないので、大きな負担を加えることなく、比較的安全に実施することができます。さらには、支えている方の足は片脚立ち状態になるため、このこと自体も主運動に備えたリハーサルともなりますし、バランス能力を高めるトレーニングにもなるので、より傷害予防に役立ちます。

【最後に】
 皆さんは、海外のプールに泳ぎに行った経験はありますか。筆者が初めて海外でプールに行ったのは米国の大学院に留学していたときのことです。そのプールは大学内にある競泳用のプールだったのですが、その時にカルチャーショック状態になりました。何に驚いたかというと、誰一人として、プールサイドで準備運動をしないのです。中には、水温に慣れるために、プールサイドから手をプールの中に伸ばして水をすくい、胸の辺りに振りかけてから入水する人はいましたが、ほとんどの学生は、いきなりプールに入り、泳ぎ出しました。
もちろん、誰一人として、準備運動として、プールサイドで膝の屈伸運動をしたり、膝や足首を回したりなどしません。それでも、誰一人として、途中でけいれんを起こしたりしませんでした。
 実は、最も安全で効果的な準備運動の方法は、主運動と同じ運動を、ゆっくりと小さな動きで始め、徐々にスピードを上げ、動きを大きくしていくことです。これを特異的ウォーミングアップといいます。
 今一度、皆さんが普段行っている準備運動を見直してみてください。主運動と全く関係のない動作を行ったりして無駄なことをしていないか、ご自身で確認してみてください。


<プロフィール>


西端 泉(にしばた いずみ)

川崎市立看護短期大学教授、日本フィットネス協会理事

主な研究テーマ:
高齢者の体力・健康を維持・増進するためのレジスタンス・トレーニング
安全性を優先した健康づくり運動の開発
認知症予防・改善のための運動
発達障害を有する子どものための運動


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