これが本当の健康づくり運動

これが本当の健康づくり運動

第5回 ニーストレッチング

 前回は、関節の構造から見た膝をひねることの危険性と、膝関節をひねる運動の一つであるハードラーズストレッチングを紹介しました。
 もう一つ、しばしば見かける、膝をひねりながら行われるストレッチングを図1に示します。

図1 ニーストレッチング
図1 ニーストレッチング

 テレビのニュース番組などで、米国の大リーグで活躍している有名な日本人野球選手が、このストレッチングを行っているのを見ることがあります。野球選手には、このストレッチングが必要です。スライディングする際のフォームを改善したり、その際の安全性を高めたりするためです。
 しかし、このストレッチングは、一般人には必要がないばかりか、内側側副靭帯を伸ばしかねないので、危険です。このストレッチングの目的は、太ももの前の大腿四頭筋とよばれる骨格筋を伸ばすことによって、膝を曲がりやすくすることです。
 年をとると、膝は伸びにくくなるばかりでなく、曲がりにくくもなります。これを予防したり、改善したりするために、大腿四頭筋のストレッチングが必要になる場合があります。膝をひねらずに大腿四頭筋を伸ばすストレッチングが、たとえば第1回で紹介した図2に示したものです。これらのより安全性の高い方法で行うようにしてください。

図2 安全な大腿四頭筋のストレッチング
図2 安全な大腿四頭筋のストレッチング

【座り方にも危険が潜む】
 畳の上に座るときに、男性はあぐらをかくことが多いと思います。これに対して、女性は、正座をしないときには、図3に示したような座り方や、横座りをする人が多いようです。図3に示したように座ると、両方の膝の内側側副靭帯が伸ばされてしまいます。靭帯がまだ弱い、幼い子どもにしばしば見られる座り方でもありますが、これを放置すると、内側側副靭帯がゆるい大人に成長し、年をとったときに膝が横方向に不安定になる危険性があります。横座りの場合も、片方の膝の内側側副靭帯が伸ばされた状態になるので、同様です。
 もし、図3のような座り方をしても膝の内側に緊張感を感じない場合は、すでに内側側副靭帯が伸び切ってしまっている可能性もあります。

図3 ひざ関節の負担が大きい座り方
図3 ひざ関節の負担が大きい座り方

 あぐらの場合は、外側側副靭帯に負担が加わるようにも思えますが、前項で説明したように、外側側副靭帯は太くて短いために丈夫であり、半月板にもつながっていないので、膝に対する負担は大きくありません。
 マナー上、女性にあぐらをかけとは言えませんので、正座をしてください。正座ができなかったり、できたとしてもつらかったりする場合は、小学校や中学校で、体育館にお尻を下ろして座るときにさせられる、いわゆる「体育座り」をしてください。
 ただし、あぐらや体育座りは、腰(腰椎)が丸まった(過屈曲)状態になるために腰背部の負担が大きいので、理想は、イスやソファーに座ることです。膝が悪くなって整形外科を受診すると、畳に座るのをやめなさいと言われることが多いのですが、その理由はここにもあります。

【まとめ】
 しばしば目にする運動の中に、安全性や効果に問題があるものがたくさんあります。それらの中の一つとして、前回に引き続き、「膝をひねる」動作であるニーストレッチングを取り上げました。
運動ばかりでなく、日常生活の動作の中にも、関節に余計な負担をかけるものがあります。これを機会に、自分や、身の回りの人の日常動作や姿勢を観察してみてください。


<プロフィール>


西端 泉(にしばた いずみ)

川崎市立看護短期大学教授、日本フィットネス協会理事

主な研究テーマ:
高齢者の体力・健康を維持・増進するためのレジスタンス・トレーニング
安全性を優先した健康づくり運動の開発
認知症予防・改善のための運動
発達障害を有する子どものための運動


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