番外編その四:心筋

明日はバレンタインデー。ハートのこもったチョコレートをあげたりもらったり、もらえなかったりする日ですね。さて、そんなバレンタイン・イブに、ちょっと目先を変えてハート(心臓)のお話を。心臓だって筋肉でできた袋ですから、まあここで取り上げることも間違ってはいないはず。うむ。

通常、身体を意思通り動かすための骨格筋(骨についている筋肉という意味)は「横紋筋」といって、顕微鏡で見るとシマシマ模様に見える構造をしています。一方、内臓の筋肉は構造が違い、なめらかな見た目をしているため「平滑筋」といい、こちらは意志通り動かしたりはできません(これができれば、シリアスな場面でうっかりお腹が鳴ったりするのも完璧に阻止できるんですが…まあ無理ですね)。しかし、心臓だけは変わっていて、内臓なのにシマシマ模様のある構造をしています。もちろん、意のままに心臓を止めたりすることはできないので、骨格筋とはまたキャラクターが異なります。したがって、心臓の筋肉はそれ以外の筋肉と区別して「心筋」と呼ばれます。

心臓は、ご存知の通り胸の真ん中あたりにあり、ちょうどご自身の握りこぶしくらいのサイズです。1分間に70回拍動すると、1日に10万回も拍動している計算になります。拍動を休んでたら本体が死んじゃいますから、これを毎日毎日、何十年も続けます。つまり、骨格筋よりもずっと、疲労に強い筋肉なのです。心臓の役割は、肺に取り込まれた新鮮な酸素を、血流に乗せて、全身の隅々まで送り届けること。心筋の細胞は、血圧と血流をコントロールするペプチドホルモンも分泌し、きちんとそれらを制御しています。

また、規則正しく適正な回数の収縮をするため、心臓にはペースメーカーの役割をする結節(洞房結節)があり、1分間に60~70回のペースで収縮の信号(電気信号)を出しています。心臓を悪くしてペースメーカーを入れる手術を受ける方がおられますが、そもそも、もともとこの役割をしているのが洞房結節ということですね。洞房結節から出た信号が心臓全体に伝わることでギュッと収縮が起こるのですが、池の片隅からポチャンと小石を投げ込み、そこから波紋が広がるようにジワジワとした信号の伝わりではちょっと勢いが足りません。全身に血液を送り出す勢いが必要ですから。そこで、効率よく全体に電気信号を届けるための高速道路のような特殊な心筋がうまく配置されています(名前はそのまま「特殊心筋」。刺激伝導系とも言います)。心臓の筋肉は、このように独自の特徴を持って機能しているのですね。ちなみに生物の心臓は、切り離して体外に取り出してもしばらく拍動を続ける「自動性」を持っています。これも特徴的なところでしょう。

さて、軽く心筋についてのお話をしてきましたが、昨年の秋頃、わりとインターネット上で取り上げられて話題になった心臓ネタがあります。「心臓がん」が少ないのは何故?というお話です。確かに、がんという病名はよく聞くけれど、胃がんや大腸がん、肺がんといったものほど「心臓がん」って耳にしないですよね。

そもそも、「がん細胞」は人から感染するものではない、すなわち、自分の体の正常な細胞が変化して「がん細胞」ができるわけです。どう変化してしまうかというと、細胞分裂の際のミス(遺伝子の異常)などで「意味も無く増えすぎる」という性格を持ってしまうのです(様々な原因が考えられています)。色んな細胞が適材適所で制御されて行われているこの身体に、全然関係ない細胞が、無尽蔵に増えていく。これが「がん」の姿です。したがって、もともと細胞分裂が旺盛で、増えやすいタイプの正常細胞が「がん化」すると大変です。増殖能力の強いがん細胞になってしまう可能性が高いのです。しかし、横紋筋は非常に細胞分裂が起こりにくいという特徴があるのです(例外として、子供の横紋筋は、大きくなるときに分裂して数が増えていく必要があるため、子どもには横紋筋のがん…正確には筋肉に出来るがんは「がん」とは呼ばず「肉腫」と呼びますが…が生じることがあります)。実際、心臓に腫瘍が見つかる確率は0.1%という話もあり、しかもほとんどのものが良性なのだとか。

また、心筋が分泌するペプチドホルモンにがんを抑制する作用があるとの報告がある他、そもそもそこを通過する血液の流れが速すぎ、ガン細胞が定着しにくいのも理由の1つとされています。あの手この手で、生体は大切なハートを守っているのかもしれませんね。

ちなみに心筋も筋肉ですから、鍛えることも可能ですよ。「スポーツ心臓」って分かりますか?マラソンなどで心臓を酷使するアスリートは、心臓の壁が鍛えられて分厚くなり、一回の収縮で押し出す血液量が多くなります。なので、一般の方よりも普段の心拍数は少なくて済むんですよ(1分間に40回台の選手もいるそうです)。そこまでやれとは言いませんが、鍛えたタフなハートって魅力的かもしれません。心臓に問題のある方は無理は禁物ですが、たまには心拍数をちょっと上げるようなイキイキどきどきする刺激を意識的に入れてあげるのも良いことですよ!


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