第四十五講:肋間筋

皆さまごきげんよう。「筋肉かるた」に採用された45個の筋肉を取り上げてきた本コラムですが、とうとう45稿目を迎えました!拍手!いやはや…毎週レポートに追われる学生の気持ちを実感する日々でした…。とは言え、あとしばらくは継続の予定ですので、筋肉好きの皆さま、引き続きよろしくお願いいたします。

さて今回は肋間筋。12本ある肋骨どうしの間をつないでいる、そう、いわゆる「スペアリブ」です。肋間筋には、肋骨を引き上げてその1本1本の間隔を広げる「外肋間筋」と、逆に肋骨をすぼめるように1本1本の感覚を狭める「内肋間筋」があります。肋骨は鳥かごのように肺を取り囲んでいる骨で、この肋骨が動いてその内部(胸腔)の容積を変化させることで肺が伸び縮みし(ちょうちんを広げたり畳んだりするようなイメージ)、呼吸活動が起こっているのです。

そういえば、はるか以前の稿で「横隔膜」を取り上げましたよね(今、自分で目次をクリックして読んでみました。この頃はまだ原稿が短かったですね…何で徐々に長くなってるんだろう…)。人間の胴体部分は、「横に隔てる膜」である横隔膜によって、胸(胸腔)とおなか(腹腔)の空洞が横に区切られています。息を吸うときには横隔膜と外肋間筋が収縮して胸腔が…すなわち肺が膨らみます。それらの筋の力が抜け、伸びた肺が元に戻ることが「息を吐く」状態であり、これにはほとんど力を要しません。これが通常の「呼吸」の姿です。

さて、それではよく耳にする「胸式呼吸」と「腹式呼吸」って何なのでしょうか?あ、別に、どちらが良いのか、という問題ではないのです。試しに、精一杯まで息を吸ってみてください。胸がぱんぱんに膨らむ感じがしますよね。これ、「後鋸筋」の稿でもやりました。人は、意識して呼吸をしようとしたり、緊張していたりする場合、おなか(腹腔)は特に動かさず、胸を使って呼吸をする方式になりやすいです。

逆に「腹式呼吸」は、肋骨が広がらないよう、横隔膜を押し下げ、(押し下げられた横隔膜におなかの内臓が押されて)おなかが膨らむように深く息を吸う⇒腹筋群を使っておなかをへこませながら(横隔膜を上まで押し戻すように)深く息を吐く、といったやり方をします。意識の力が必要なので、日常的に行うのは難しく、例えばヨガなどで取り入れられています。意識的な深くゆっくりとした呼吸は、脳からのセロトニンの分泌を促進し、精神を安定させる働きがあることが分かっているそうですよ。眠る前などに取り入れてみると良いかもしれませんね。仰向けだと肋骨が広がりにくいので、より行い易いと思います。

…あれ、ということは胸式呼吸ってあまり良くないの?という疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうことではないのですよ。近年、ヨガと同様、「ピラティス」も広く知られるようになってきました。どちらも精神と身体に対してアプローチするものなのですが、ヨガはストレッチと精神的なリラックスを主目的とするのに対し、ピラティスはインナーマッスルを鍛えるなどの身体づくりを目的に加えたものとされています(様々な種類や流派があるので一概には言えませんが)。ピラティスは元々、戦争の犠牲者たちを救うためのリハビリテーションから発展したものだそうですが、このピラティスで主に用いられている呼吸法は「胸式呼吸」なのです。「リハビリテーション」という言葉は、re(再び戻る)とhabilis(適した、ふさわしい)から成り立っており、元の生活の場に戻る、自分らしく生きる力を取り戻す、といった意味で用いられています。すなわち、ピラティスの目的は「生活の中で使える身体を取り戻す」ことであるため、おなかのインナーマッスルをぐっと締めたまま呼吸をすること、しかも生活の中で使っていきやすい胸式呼吸をすることが勧められているのです。ヨガやピラティスに特に興味のない方も、日常生活動作の際には腹筋群に力を入れて柔軟に肋骨を使った呼吸を行うことを、そして就寝前には深い腹式呼吸を行うことを、意識的に切り変えて併用してみてはいかがでしょうか。

ちなみに、細かい作業や急ぎのパソコン仕事など、集中する作業に取り組んでいるときって、ヒトはどうしても浅~い胸式呼吸になりがちです。これだと酸素を取り込める量自体も減ってしまい、余計に体が緊張状態となる悪循環にもなりかねませんから、時には身体を伸ばして大きく息を吸い、深呼吸をしましょうね。実際、デスクワークの長い方などは、大きく胸郭を動かす動作も少ないですから、肋間筋が硬くなり、肋骨が柔軟に広がりにくくなっている方もいらっしゃるように思います。特に猫背の方、いつも胸を縮めたような姿勢になりがちですので要注意です。お仕事の合間にもできそうな、肋間筋のストレッチをお教えしておきましょう。

両手を組んで大きく上に伸びます。立てるようなら立って、無理なら椅子に座ってでも結構です。その状態で大きくゆっくり深呼吸。肋骨の動きを感じましょう。次に、そのまま上半身を右にゆっくり倒していき、左の肋骨の間を引き伸ばすようにして深呼吸。終わったら次はつっくりと左に倒していって同様に。終わったら前方に上半身を曲げて行き。背中側の肋骨の間を引き伸ばすよう意識して深呼吸。終わったら後方へも反らして、前の肋骨の間を引き伸ばすように深呼吸を行いましょう。余裕がある方は挙げた両腕ごと上半身をぐる~りと左右にねじったり回したりしておくと良いですよ。体の硬い方は、お風呂の中やお風呂上がりに行うのがおすすめです。これ、ボイストレーニングなどを行っている方にもいいですよ。使える息の量が増えますし、声の伸びが違います。お試しあれ。

柔らか~いスペアリブを育てて、たくさんの酸素を肺いっぱいに取り込んで、血液に乗せて体中へと送り届けてあげようではありませんか。アタマもカラダもすっきりリフレッシュすること請け合いですよ!


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