第三十講:大腿直筋

日常生活では、毎日行う歩行や立ち上がりなどの動作において、「膝関節を伸ばす」力が非常に重要です。この動きを担当しているのは、太腿の前面を覆う大きな筋肉群「大腿四頭筋」です。今回のテーマである大腿直筋がそのうちで一番長く、そこに中間広筋、外側広筋、内側広筋という付着部位がそれぞれ異なる筋肉が加わります。

太腿の筋肉に自信のある方、ちょっとズボンを脱いで椅子に座り、ご自分の膝を力いっぱい伸ばしてみて下さい。膝のお皿の上、太腿に、内側と外側に大きく盛り上がる筋肉の輪郭が確認できると思います。太腿の皮下脂肪が若干多めで輪郭が分かんない、という方は、膝を伸ばしてぎゅっと力を入れたまま膝上を触ってみると、脂肪層の下で筋肉の盛り上がりを感じることができると思います。盛り上がる位置を確認すると、内側の盛り上がり(内側広筋)よりも外側の盛り上がり(外側広筋)の方が高い位置にありますね。そしてさらに上、太腿の中央あたりを触ると、内側と外側はそれほど盛り上がっておらず、中央部分が硬く収縮しているのを感じますね。ここが大腿直筋の筋腹(きんぷく。筋肉の中央部分の盛り上がったところをこう呼びます)です。では中間広筋はどこかというと、大腿直筋をぺろりとめくるとその下層に付着しており、長さは短めです。これら4つの筋肉の下端はまとまって1つの強靭な腱となり、膝のお皿にくっつき、そこからさらに膝下まで伸びています(膝蓋腱と呼びます。かっけの検査の時にハンマーで叩く部分ですね。例えが古いか…)。

筋肉は、加齢とともにそのボリュームも筋力も低下してくることが知られていますが、この大腿四頭筋は加齢に伴う変化をよく反映します。例えば、ヒトという種の身体年齢のピークは約25~30歳と言われたりするのですが、80歳では大腿四頭筋の分厚さが30歳の時代の約1/3に減ってしまうことが分かっています。筋力もこれに伴って半分程度に減ってしまうのだとか。つまり、ですよ。今現在、椅子から(もしくは床から)しっかり膝を伸ばして立ち上がれている方でも、80歳になったらこの筋力が半分になるということですから…単純に考えると、今現在において片脚の力で立ち上がれない状態の方は、80歳になったらもう両脚でも立ち上がれないということを意味しています(ちょっと乱暴な理屈ですが)。年を取ると、自然と日常生活の中での活動量や運動量が減少してくるため、筋肉としても、「あ、こんなにボリューム要らないかな」ということで、ゆっくりゆっくり筋肉の量が減ってきてしまうのです(使わない筋肉の分の重さを持って歩かなきゃいけないのはムダ、と身体が判断してしまうような感じですね)。加齢に伴う筋肉の減少のことを「サルコペニア」と呼びます。これを防ぐためには、やはり日常の活動量を意識的に高めに保つことでしょう。幸い、筋肥大そのものは何歳になってもちゃんと起こることが分かっていますので、しっかりトレーニングしていけば低下した筋力もある程度回復させることが可能です。ただし、一度落ちてしまった筋肉をまた育てるのは大変(年を取ると筋線維の受けたダメージが回復しづらいので、大きな負荷がかけにくいし、若いころより超回復→筋肥大に時間がかかる)ですからね、やっぱりもともとの財産(筋肉)を無駄に落としてしまわないよう心がけたいところです。

さて、大腿直筋は四頭筋のメンバーの中で一番長いと書きましたが、大腿四頭筋のメンバーのうち、大腿直筋だけが、膝関節と股関節のふたつをまたいで走行する「二関節筋」です。したがって大腿直筋のみ、膝を伸ばす、かつ、股関節を曲げる働きがあります。座って過ごす時間が長い方などは、大腿直筋をしっかり伸ばす動作をあまり行う機会がなく、短縮しがちな方もいらっしゃるかも知れません。股関節のつけねをしっかり伸ばす、大腿直筋(と、股関節を曲げる「腸腰筋」)のストレッチをご紹介しますね。床に両脚を伸ばして座ります。ここから、片脚だけ膝を曲げてお尻の下へ、つまり、片脚だけ正座をするような格好になります。ここから身体を後方へ倒していくと、股関節の前方、脚の付け根の部分がぴんと引き伸ばされてきます。後方へ両手をついて身体が倒れないよう支え、ふーっと大きく息を吐きながら、そのままじっくりと太腿の前面をストレッチ。できる方は、脚を曲げている方のお尻をぐっと上に持ち上げるようにすると、より脚の付け根が引き伸ばされるのが分かると思います。筋肉が気持ちよく引き伸ばされていることを意識しながら30秒キープし、元に戻ります。反対側も同様に行い、2~3セット繰り返しましょう。大腿直筋の端っこは股関節をまたいで骨盤に付着していますから、この筋肉が短縮して硬くなっていると、骨盤が前方に引っ張られて傾き(骨盤の前傾といいます)、腰が反り腰の状態になって腰痛が引き起こされる場合もあります。しっかり大腿直筋のストレッチをすることだけでも、ずいぶん腰が楽になる方もいらっしゃるようですよ。ぜひ試してみて下さいね。

ちなみに、大腿直筋だけではなく、大腿四頭筋を全体的に鍛えるのに適しているのはやはりスクワットです。自分の体重自体を負荷に出来ますから何の道具もいりません。行う時は腰が反らないように注意してゆっくりと深く腰を落とし、太腿の前面をしっかり意識しながらゆっくりと息を吐きつつ膝を伸ばしていきましょう。なお、上半身は前に倒しすぎないように。股関節を曲げていくイメージで上半身を倒してしまうと、そこから姿勢を戻していくときに主に使われるのは股関節の伸展筋群(大殿筋やハムストリングス)です。あくまで膝の伸展筋を鍛えたいわけですから、上半身はできるだけ起こして、「膝を曲げて→膝を伸ばす」のイメージを大事に行いましょう。回数設定のお勧めは、フォームをきちんと守った上で「もうこれ以上無理~!」という筋疲労ギリギリの回数まで行うこと。ここまでやったら一旦休み(でも1分以内)、再度、同じように「もう無理~!」という回数まで行います。どうです、疲れるでしょう。自分の体重をしっかり支える太腿でいられることに感謝しつつ、80歳でも軽々動ける身体でいられることを願って、歯磨きなんかしながらスクワットを日々の習慣にしてみてください!(目撃されるとちょっと恥ずかしいですが…。)

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