第二十八講:腓腹筋

今回はふくらはぎの筋肉の話です。「ふくら」=ふっくらした、「はぎ」=脛、つまり、すねの後ろ側の膨らんだ部分をふくらはぎと呼びますが、この部分の表層を覆っているのが「腓腹筋」です。皮下脂肪の少ない方や、腓腹筋がしっかり発達している方などが「つま先立ち」をすると、腓腹筋の輪郭がふくらはぎにくっきり浮きあがって見えます。自分の腓腹筋の形をチェックしてみてください。この筋肉は膝関節と足関節、ふたつの関節をまたいで走行する「二関節筋」で、膝を曲げる動きと足を下に向ける(=つま先立ち)動きを担当しています。腓腹筋はY字のような形状をしており、筋肉の頭が内側と外側の二つに分かれています。足首に向かうにつれ細く頑丈な腱となり、以前ご紹介したヒラメ筋の腱と合わさって、アキレス腱となります。

腓腹筋自慢の男性って結構いらっしゃるんじゃないでしょうか。よく歩く方やランナー、自転車乗りの方などは、地面を蹴ったりペダルをこいだりするときに腓腹筋の筋力を発揮しますので、大きく発達していることが多いですね。逆に女性は、「柳葉魚足」なんて呼ばれるたくましい腓腹筋を、コンプレックスに感じている方も多いかも…(あ、漢字読めました?「シシャモ足」です)。子持ちシシャモのようにぷっくりと膨らみの目立つ足は、確かにしなやかなオトナの脚線美、というイメージにはそぐわないかもしれませんね。この膨らみ、純粋に筋肉による隆起であれば問題はなく、むしろとても健康的だと思うのですが、脂肪やむくみで太くなってしまっているのは、ちょっとよろしくないですね。つま先立ちをしても筋肉の輪郭が不明瞭で、足首がきゅっと引き締まっておらず、もったりとふくらはぎが重い感じのする方は要注意です。

「ふくらはぎは第2の心臓」という言葉があるのをご存知でしょうか。心臓は、身体のすみずみまで新鮮な血液を送り届けるポンプの役割をする臓器ですが、こうして送られた血液がまた心臓へ戻ってくるためには、末梢の筋肉の収縮が必要なのです。特に、足先まで送られた血液は、地球の重力に逆らって心臓の高さまで登ってこなければならないため、結構な押し上げ力を持つポンプが必要なのです。歩くことなどによる足首の動きに伴い、ふくらはぎが収縮すると、血管が筋肉にリズミカルに圧迫されて血液が心臓に送り返されやすくなります。筋肉が血管をギュッ、ギュッと絞り上げる様子が牛の乳しぼりに似ていることから、この作用をミルキング・アクションと呼んでいます。普段歩く量が少なく、同じ姿勢で長時間仕事をするような環境だと、夕方にはパンパンに足がむくむという方もいらっしゃるかと思いますが、血液が心臓まで戻る力が弱まっていると血管に血液が滞り、体内の余分な水分を血管内に回収する余地がなくなってしまうのです。座ったままでもいいので、時々意識的に腓腹筋を収縮させる時間を持つことで、夕方のむくみをある程度改善できますよ。腓腹筋に力が入ることを意識しながら、踵を上げて下ろす、を10回×2~3セット繰り返します。飛行機内で長時間体が動かせないとき、エコノミークラス症候群を予防する目的でもこういった運動が推奨されていますので、覚えておくとよいでしょう。

また、ふくらはぎのお悩みで多いのが、かるたの読み札の文句にもなっている「こむら返り」です。方言によっては「こぶら返り」と呼ぶ地方もあるようですね。コブラ返り…プロレスか何かの技のようにも聞こえる響きですね(そうか?)。いきなり腓腹筋が痙攣し、ふくらはぎがめくれ返るような感覚に陥るので(怖いな)、こんな名前が付いたようです。普段、意識下ではきちんとコントロールできているはずの筋肉の収縮が、例えば睡眠時や、過度の運動による疲労が蓄積したとき、勝手に、痛みを伴うほど強い筋収縮が持続的に起こるという状態です。こむら返りの起こっている時の腓腹筋を触ると硬く収縮し膨隆した状態になっています。無意識下とはいえ、起こっていることは筋肉の過剰収縮ですから、これを解くためには、意思に反して収縮してしまっている筋肉を引き伸ばしてやるのが手っ取り早いです。つま先立ちの反対方向に引っ張ればいいわけですから、痛みに耐えつつ、膝の裏を伸ばし、足部を手で持って足先を上にそらすようにアキレス腱を引き伸ばしましょう。足の指まで上にそらすように、足裏全体にかけてストレッチするといいですよ。腓腹筋の運動がもともと不足している方や、疲労がたまっている状態の筋肉だと、筋収縮の命令に対して筋肉が柔軟に対応できず、こむら返りが起こりやすくなります。また、就寝時によくこむら返りが起こるという方には、寝る前に十分な水分を取ることが推奨されていますが、その理由についても補足しておきますね。筋収縮には、体内の水分に溶け込んだカリウム・ナトリウム・カルシウム・マグネシウムといった電解質(イオン)が関わっています。これらのイオンが細胞膜を通して行き来することで情報のやり取りが行われ、筋収縮の強さなどが適切に調整されているのですが、体内の水分量が不足すると、この電解質の行き来がスムーズに行われなくなり、無意識下での柔軟な筋収縮が阻害される可能性があるのです。スポーツなどでたくさん汗をかいた後も、水分とイオンを補充するよう心がけておくと、体内の水分と電解質のバランスが保たれ、こむら返りが起こりにくくなりますよ。

スポーツの中には、腓腹筋を持久的に酷使するような種目や、ダッシュなどの瞬発的な動きを必要とする種目が多くあり、腓腹筋が過剰伸展された瞬間に断裂する(腓腹筋断裂、肉ばなれ)ケースが時折みられます。どこの筋肉を使う場合も共通ですが、事前・休憩時のストレッチを心がけ、疲労ができるだけ蓄積しないよう、また、急な動きに対して筋肉が柔軟についていけるよう、きちんと下準備をしておきましょう。一度断裂が起こった箇所は、治癒する段階で硬く瘢痕化(皮膚の傷が治っても硬い傷跡が残ってしまうのと似ています)してしまうことが多く、柔軟に伸び縮みするべき組織に一か所、そんな硬い部分があることで、同じ個所の再損傷が生じる可能性が高くなる可能性も大きいです。いつも同じ個所が肉ばなれを起こす、痛みが出る、という方ほど、事前の入念なストレッチを心がけてくださいね。以前、腓腹筋の肉ばなれを経験したことがあるという方、その箇所を触診してみて、筋肉にしこりのようなものが触れる場合、その箇所を軽く指で圧迫しながら縦横に動かし、筋肉と周囲組織の癒着をはがし、しこりを押しつぶしてほぐすようなイメージを持ちながらマッサージを継続してみてください。第2の心臓をのびのび使って、むくみ知らず・痛み知らずのふくらはぎを作っていきたいですね。

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