第十五講:ローテーターカフ

これ、日本語では「回旋筋腱板(かいせんきんけんばん)」と呼びます。筋肉かるたにちゃっかり入っていますが、厳密にいうと「1つの筋肉の名称」ではありません。これは、肩甲骨から上腕骨にかけて付着している4つのインナーマッスル、肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋の末端の腱が形成する板状の腱(=腱板)部分のことを指す名前です。ローテーターは「ローテーション(=回旋)させるもの」、カフは「シャツなどの袖口」、つまり「ぐるりと取り囲んでいる状態」を表しています。
ヒトの身体において、肩関節と股関節はさまざまな方向に動かすことのできる関節構造(球関節)をしています。股関節は、ころりと丸いボール状をした大腿骨の端(骨頭)が骨盤にしっかりとはまり込むような構造をしているため、ほとんど脱臼することはないのですが、肩関節の場合は、上腕骨の骨頭が半球状であることに加え、これがはまり込む肩甲骨の受け皿部分が非常に浅く小さい(上腕骨頭の3分の1程度のサイズ)構造なのです。小さなスプーンに大きめのボールを乗せたような状態(スプーン・リレーを思い出しますね)になっているため、広い可動域を持つ反面、安定性が悪く脱臼しやすいのです。不安定性を補うため、関節周囲に関節包や靭帯などの支持組織があるのですが、さらにローテーター(回旋筋)により上腕骨頭を肩甲骨に引きつけておくことで安定性を増しているのです。
例えば投球動作など、肩の可動域を広く使用するスポーツなどにおいては、このローテーターカフを形成する4つの筋がうまく連動して働かないと、いいパフォーマンスができません。日本では、強肩の外野手の送球を「レーザービーム」と呼ぶことがありますね(かるたの読み札にもなっています)。これは、メジャーリーグの2001年の試合でイチローが投げた、正確で力強い送球を実況アナウンサーが「イチローからのレーザービーム攻撃だ!」と叫んだコメントに由来します。
一流の野球選手は肩の回旋筋群をフルに使うため、適切なトレーニングを積んでいます。断裂などの損傷が起こってしまえば手術で治療することになりますが、再び復帰して活躍するだけの機能を回復することは非常に困難だといいます。身体の奥の方にあるインナーマッスルは負荷量の大きいウェイトトレーニングでは鍛えるのが難しく、また日常生活でもあまり意識して使うことのない部分です。ローテーターカフは、十分に鍛えられていない状態で頻繁に腕の可動を繰り返すと、摩擦などにより炎症を起こすことがありますし、また加齢と共に筋が固くなって弱化することで、俗に言う「四十肩」「五十肩」の原因にもなります。あ、四十肩も五十肩も俗称で、正しい名前は「肩関節周囲炎」です。英語では「フローズンショルダー」。痛みとともに運動制限が生じ、まるで凍り付いたように腕が上がらない…そんな様子のよく表れている言葉ではないでしょうか。
肩関節って意外と、日常、可動範囲いっぱいまで動かして使うことがほとんどないと思いませんか? 動かさなければそれだけ人間の身体は固くなります。柔軟性や筋力が非常に低下しやすい状況になっているわけです。読者の皆様、利き腕と、そうでない側の腕、どちらも同じ範囲くらいしっかり動かせるでしょうか。背中の後ろに両手を回して、右手が上の場合も左手が上の場合も同じように指先が組めますか?どちらかが明らかに固いぞ、という方は要注意。
ということで、予防に使える簡単なストレッチをひとつご紹介しておきます。用意するものはタオル1本。両腕を大きく開き、肘をのばしてタオルの両端を胸の前で握ります。タオルを両側に引っ張りながら、肘を曲げずにゆっくり頭上に上げ、背中側に回していきます。ぐるりと背中まで回せるくらい柔らかな方は、ゆっくりと10秒かけて背中側に回し、次にまた同じ要領で後ろから前に10秒かけてゆっくり回して戻してくる、を数回繰り返します。「回らないよ。そんなの!」という方は無理をなさらず、タオルを持つ手の幅を広げると少し楽です。腕を上げていき、自分の伸ばせる最終域まで回したら、しばしストップ。10秒カウントします。固い方は、後ろから前に回してくるのも勿論難しいでしょうから、背中側でタオルの両端を握り、肘を伸ばしたまま両腕を背中側の上がるぎりぎりまで持ち上げて10秒ストップで結構です。決して無理をせず、ゆっくりした動作で、毎日、少しずつでもいいので続けるようにしましょう。お風呂上がりの習慣にしてしまうといいかもしれません。いつまでも「二十肩」でいたいものですね。

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