第九講:尺側手根屈筋

しゃくそくしゅこんくっきん。ちょっとした早口言葉のようですが、読者の皆さま、名前の意味はお分かりになるでしょうか。「筋肉かるた」に選出された筋肉のなかで唯一、手首の動きに関わる筋肉です。なぜキミだけ選ばれたんだ。謎です。それは兎も角。

手関節(手首)は、掌側に曲げる「掌屈」⇔手の甲側に曲げる「背屈」、親指側に曲げる「橈屈」⇔小指側に曲げる「尺屈」、と、二軸性の曲げ方ができる、比較的自由度の高い関節です。それぞれの動きに関わる筋肉の腱(筋肉の端っこ、骨に付着する部分)がぐるりと手首の周囲を取り巻くようにたくさん並んで走行しているわけですが、そのうち手首を尺屈+掌屈させる働きを担うのが、今回の「尺側手根屈筋」です。手首の掌側、小指側に腱を触れることができます。手首や指の動きに関係する筋肉は前腕にある、つまり肘関節周囲から始まって末梢の腱が長く伸びた構造をしているものが多く、尺側手根屈筋も上腕骨や肘頭後面から起こっています。
日常生活だけでなく、様々なスポーツや楽器の演奏などにも、手関節の動きは大きく関わります。円滑に柔軟に、ぐるぐる動くようにしておけばいいというだけではありません。例えば投球動作を例にとっても、ボールをリリースする際の手関節の向きが安定せずブレてしまえば、球筋が定まらず、コントロールできないということになりますし、台所で包丁を使う場面を例にとっても、手関節を必要に応じて固定することができなければ、物を切ったり皮むきをしたりが危険で仕方ありません。金づちやスコップなど、慣れない道具を頑張って使う時などにもかなりの収縮力を発揮しなければならないため、あまり意識していなくても、オーバーユースで腱鞘炎を起こすことのある部分です。
さて、時に耳にするこの「腱鞘炎」という言葉。「腱鞘に生じる炎症」のことなのですが、腱鞘とは何でしょうか。文字通り、腱を包んでいる鞘(さや)のことです。細いヒモ状の手首や指の腱は、内部に滑液(潤滑剤の役割)が入ったストロー状の腱鞘に包まれています。これが周囲の組織との摩擦を防いでおり、また、屈曲に関係する腱鞘たちはまとめて「屈筋支帯」というバンドで腱が浮き上がらないよう押さえられています。つまり、指や手関節を動かすための腱は、筋の収縮のたびに狭いトンネルの中を行き来するような状態になっているのです。
したがって、指や手関節を使いすぎたりすることで、腱と腱鞘の間に過剰な摩擦が生じ、これが炎症を引き起こすきっかけとなるのです。また、炎症が原因で腱が腫れたり、腱鞘が肥厚化したりすれば、ますます腱の滑りは悪くなり、その摩擦が炎症をひどくするという悪循環が生じます。そもそも、腱鞘炎に限らず、痛みや腫れを伴う「炎症」を生じる病態――簡単に言えば、診断名に「○○炎」という漢字の付く病態が起こった場合、最も簡単で確実な対処法は「安静にする」ということです。炎症が治まるまで安静にする、これに越したことはありません。熱を持っている場合は冷やす、どうしても動かしてしまうようならテーピングなどで簡単に固定する、といった工夫も良いでしょう。何らかの原因があって起こった急性炎症の場合、ひきがねとなった刺激が無くなれば必ず症状は落ち着いくるはずなので、1~2週間ほど安静に努め、症状がどうなるか観察しましょう(素人判断は危険ですから、変わらない、もしくは酷くなるようなら改めて受診してくださいね)。ともかく、痛みは「慢性化させないこと」が大切ですから。

さて、尺側手根屈筋から話がそれてしまいました。手関節がパフォーマンスのキーを握るスポーツ種目の選手や、パソコン作業や家事で手関節を酷使する方たちは、腱の炎症や断裂を防ぐため、柔軟性を保つためのストレッチや、(地味ですが)手関節の筋力トレーニングをしておくのも良いかと思います。筋トレにはダンベルやチューブなどを使用するといいのですが、もともと手関節はそれほど大きな力に耐えられる関節ではありませんから、重すぎるダンベルを誤った方法で使うことで、かえって損傷を起こしてしまうことにもなりかねません。ポイントは、トレーニング中、肘がぐらつかないようきちんと固定することです。手関節に関わる前腕部の筋トレ種目としてオーソドックスなのは「リストカール」。椅子に腰かけ、ダンベルを持つ方の肘から手首までを自分の大腿にぴったり乗せ、固定します。手首から先を膝の前に出しておき、ダンベルは手で強く握りこむのではなく、手指に軽くのせるようにしてスタートです。指先からゆっくり巻き込むように(=カール)手首を起こし、最終位で数秒キープして、またゆっくり下ろします。目標は10~20回×2~3セット、故障を引き起こさないためにも、また疲労で正しいフォームが維持できなくならないためにも、軽めのダンベルで行ってください。手関節の屈筋群を総合的に鍛えることができますが、意識して小指側に曲げるようにすれば尺側手根屈筋のトレーニングに有効です。
ちなみに…男性の皆さま、「さりげなく腕まくりした時の、男性の前腕」フェチの女性って結構多いんだそうですよ。初夏に向けて、前腕の筋肉をしっかり鍛えてさりげなく筋肉質アピールしちゃいましょう!

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