第二講:縫工筋

筋肉の名前になっている「縫工」とは仕立て屋さん(sartor)のことです。昔、西洋の仕立て屋はあぐらをかいた姿勢で仕事をしており、このときに縫工筋が浮き上がって目立つことからついた名称です。つまり縫工筋(sartorius)の機能はあぐらをかくときの動き…股関節を外に向けて曲げる(外旋+屈曲)かつ膝関節をまげる(屈曲)、ということになります。どのようにこんな複雑な動きを担当しているのか、構造面から見てみましょう。

この筋肉は人体の中で最も長く、骨盤の上前腸骨棘の直下から下腿の脛骨粗面まで斜めに走っています。つまり股関節と膝関節をまたいでいるわけで、このように2つの関節をまたぐ構造の筋肉のことを「二関節筋」と呼びます。

人体にある骨格筋の多くは1つの関節のみをまたぐ「単関節筋」が多いのですが、これはどちらかというと体の深い部分にあり、固定や姿勢保持に関わる作用が強いとされます。逆に「二関節筋」は体の浅い部分にあり、筋力そのものは弱いのですが、筋長、すなわちレバーアーム(テコの支点から作用点までの長さのこと)が長いため、大きな関節のモーメント(回転力)を生み出せるという特徴があります。しかも、浅い部分にある筋には瞬発的な収縮に関わる白筋線維の成分が多いため、素早く大きな運動動作のパフォーマンスに関わってきます。

ただし二関節筋には、萎縮や短縮を起こしやすいという特徴もあります。縫工筋が固くなり柔軟性が不足すると、骨盤が前傾した位置となりやすく、またO脚傾向が強くなる原因にもなります。また、縫工筋のことを別名「美脚筋」と呼ぶ場合もあるようです。日本女性には内股・小股でちょこちょこ可愛らしく歩く方も多いですが、実はこの歩き方、縫工筋が弱く、しっかり働いていない可能性があります。内股にならないよう意識し、颯爽と脚をまっすぐ前に大きく踏み出して歩く姿は、きっとヒールを履いても映えるはず。縫工筋を味方に付けて、日常生活の積み重ねで美脚をゲットしましょう。

ちなみに縫工筋は、膝の内側に半腱様筋と薄筋の腱とともに付着しており、3つの腱がガチョウの足ひれのように見えることから、この部分を「鵞足(がそく)」と呼んでいます。ランニングやジャンプ動作のくり返しにより、オーバーユース(使いすぎ)障害としてここに炎症が起こる場合があり、これを「鵞足炎」といいます。症状は膝の内側に起こる痛みで、もともとX脚傾向が強い人や、股関節周囲筋・大腿部の筋の柔軟性が乏しく腱に過度な負担がかかりやすい人などに多く見られます。オーバーユースによる障害の場合、痛みが強い時期はランニング等の練習をひとまず中止して安静期間をとり、必要に応じて鎮痛剤を含む塗り薬や湿布剤を使用します。もちろん、セルフケアとして炎症部のアイシング、ストレッチングは必須です。3~6週程度で軽快する場合がほとんどですが、痛みが軽減しない場合は迷わず専門医を受診しましょう。

なお、忘れがちですが、歩き方や走り方のクセによって、皆さんの靴の減り方には特徴があると思います。靴の踵の減り具合をチェックし、極端に内側が減っている場合、膝関節に内反ストレス(X脚方向)がかかっている可能性が高いです。このままだと鵞足炎を引き起こしやすくなりますので、インソールやテーピングによるアライメント矯正やフォーム矯正も予防のためには必要です。 …とか何とか書いているワタクシ、靴の踵の外側ばっかり減って行きます。がに股なんですね、きっと。縫工筋、強すぎるのかな…。

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